同人誌装丁・字組まとめ

小説同人誌を作ることにしたのでその記録。2021/7/28現在作業中、随時更新

こだわり

今回こだわろうと決めたのは以下のポイント

  1. 薄くしなやかな用紙→B6に決めたことで優先度低下。版が大きければてこの原理で多少硬くても保持しやすくなるし、下手に薄いと辞書みたいになるし、ざらついたアンティークな風合いも悪くないので
  2. 一段組
  3. 読みやすい字組
  4. 天地小口染

1,2,3は可読性のため、3はかわいいので……。

 

内容

再録でも作るか……ということでツイッターで再録希望アンケをゆるく取るなどしつつ構成を考える。

外出している話が多いので、そのままお出かけをテーマに話を選出することにした。

 

フォント

リュウミンを買いました

直線的ですっきりとしたフォントを使いたいと思い、有料フォントであるリュウミンを買いました。十年くらい前から、もし自分で本を出すならこれを使おうと思ってた。選んだ理由は下記(4)にて。

なお本文はリュウミンにし、扉タイトルと目次は装飾性の強いはんなり明朝(フリーフォント)にしました。

また表紙と扉には良い感じの英文フリーフォントを採用(表紙は箔押し部分が潰れると指摘されたため、手作業で太字化)。英語のライセンス規約を白目剥きながら読みました。商用利用OKでもポルノNGなことがあるから注意。

後日版を文庫からB6に変更することに決め、本文フォントについて再検討。結論から言うとリュウミンのままで行くことにしました。

四六判(ハードカバー単行本に一般的なサイズ)に近いB6で作るに当たり、1Pあたりの字数が少し増える。すると紙面の圧も感じやすくなる。

リュウミンは正方形のフォントなので、なんかこう……うまく言えないんですが……わちゃっとするんだよね……

四六判に近いサイズなら筑紫オールド明朝(これは長方形に近い)を用い、1970年頃の活版印刷の風合いを目指すのもいいかなと検討開始。流麗な印象が魅力的。しかし筑紫オールド明朝の最細(L)は単品売りしておらず、年四、五万のサブスクもしくは三万程度の一太郎プレミアの特典でしか入手できない模様。中細(R)だともたつきが気になる。

折角高い金出して勝ったリュウミンお蔵入りにして更に数万払うのはさすがに無理だわ……ということでリュウミンに決定。

 

(1)リュウミンとは

少しググるとわかるのですがリュウミンは特殊なフォントではなく、むしろ商業ベースで恐らく最もオーソドックスなものです。

直線的で、線の強弱のメリハリが強いのが特徴かな。

 

(2)入手方法

モリサワ社のフォントなので、モリサワのサブスクに加入、もしくは買い切りのライセンスを購入することで使用可能になります。

私は買い切りライセンスであるモリサワセレクトパック1を購入。モリサワ社のフォントから1種類を選び、同時にパソコン1台まで使えるようにするパッケージです。アマゾンやヨドバシでも取扱いがあり、およそ17,000円。高くてちょっと泣いた。

 

(3)種類

リュウミンと一言に言ってもウエイト(文字の太さ)が何段階もありますが、上記のパッケージは1ウエイトを1フォントと数えます。つまり細字を選んでしまうと、同じリュウミンの名がついていたとしても太字は使えないというもの。

なお、セレクトパックプラスというものもありますがこちらはかなフォントのみ(漢字☓)……なのかな。要注意です。

さて、私は最も細いリュウミンM-KLを選択。LはLightのLです多分。

ライセンス選択画面に行くとM-KLの中からも更に選べるようなのですが、これは規格?バージョン?が様々用意されているものであるらしい。とりあえず一番数字の大きいPr6を選びました。

 

(4)余談

小説同人誌を作るにあたって、前述の通り直線的ですっきりとしたものを使いたいと思っていました。

文章を読む時、いわゆる目が滑る状態は集中を途切れさせ、没入感を奪って読書のノイズになってしまいます。そのためフォントも縦線の存在感が強く、上から下への視線誘導に長けたものが良いと思っています。また一見して文字が密集しているように感じる紙面は、これもまた視線を右往左往させてしまうように感じます。

フォントを見比べているとだんだん違いがわからなくなってきますが(ディスプレイ上で見ていると一層分かりにくい……)字組サンプルが最もすっきりして見え、更に一般書籍のフォントとして見慣れていて安心感のあるリュウミンを選ぶに至りました。

ちなみに、同人のフォントといえばフリーフォントである源暎こぶり明朝が人気で広く使われていると聞きます(ぐぐったらそうかいてあった)

確かに欠点のない明朝で、フリーとは思えないクオリティ。無料で使えるというのは本当にマジで滅茶苦茶魅力的でした。文庫ページメーカーではいつも使ってる。

ただ、私が持つイメージではありますがこのフォントは全体的にまるみを帯びていて、曲線の印象を強く受けます。そのため視線誘導性が満足できませんでした。曲線が強いとなんか後味がもたつく……のどごしがわるい……

とはいえまるっこくて可愛らしい印象なのでほっこりした作風の本には合うかもしれませんね。

他にもヒラギノや筑紫、小塚、時々游明朝も使われているのを見かけます。特に小塚は浮遊感や透明感のある物語を嵩高の紙に刷ったら雰囲気が出そうで良いですね。

 

ちなみに、リュウミンは濁点仮名が出せないため、該当箇所だけは源暎こぶり明朝に切り替えています(3099F5して上寄せ&字間狭めに調整してもひらがなと濁点の間が不自然に空いてしまい、word上での解消法が分からない)(テキストボックスは嫌……)。フォント変わるのも違和感は違和感ですが……う〜ん

 

字組

絶対に一段組が良い

 

(1)サイズ

「B6はどう?」とアドバイスを頂き、検討の末変更。ブロスではB6と文庫で価格が変わらず、またそれなりに余裕のある組み方をしてもなお文庫より字が入ったので。文庫本の生活に寄り添うサイズ感は魅力的だし読みやすさも優れているのですが、単行本のフォーマルな風合いに強く惹かれた。特に今回再録本ということで、愛蔵版のような雰囲気を目指したかった。

一段組の時点で文庫にほぼ確定。

一般書籍の単行本のようにA5一段組という手もあるにはあるのですが、それをやるとかなり余白が多くまたフォントサイズも大きな字組をしないと可読性が損なわれてしまいます。そして余裕のある字組はページ数がかさみ印刷代がえらいことになる。

 

(2)字数と行数

単行本はものによって余白哦め〜〜っちゃまちまちで一般書籍は参考になりませんでした!

44字✕18行にしました(余白は後述)

手元にあった文庫本(新潮社、1998年発行)を数えてみたら41字✕16行だったのでそのまま。

字間を広めに取ると文字が縦長に見えて視線誘導に有利な気がします。とはいえあんまりスカスカでも間抜けだし微妙なところですよね。

フォントサイズは小さめが好きなので8pt。

ちなみにリュウミンはフォントの要求する行間が広いらしく、MSワードだとページ設定で決めた行数の言うことを聞きません。段落設定の行間を倍数とし、0.84倍程度にすることで解決。

 

(3)余白

天地が広いとかっこいいんですよ

分厚いのでノド20mm、天13mm地25mm小口13mm……だったかな。

気持ち広めが好みです。ノド小口13mm、天16mm、地10mmにしたかな。プラスでとじしろ5mm。

 

(4)ヘッダー、ノンブル

地側小口寄りに7.5ptで打つように変更しました。また章タイトル・書籍タイトルもノンブルから一文字空けた小口寄りに打つように変更。意識したのは新潮クレストブックスです。

ノンブルは上部に6ptで打った。

本のタイトルを偶数頁、章タイトルを奇数ページのヘッダーに。

ヘッダーはね〜ページ幅から左右余白幅を減じた数値を二で割ったミリ数に中央寄せタブを、偶数ページにはページ幅から左右余白幅をげんじた数値のミリ数に右寄せタブを設定するという原始的な方法で場所を調整しています。

 

(4)余談

十年くらいずっと言ってるんですが二段組が大嫌いです。理由はフォントの項で述べたのと同じく視線誘導が妨げられるから。

視点のワープの回数が、一段組ならページをめくった時の一回だけなのに、二段組だと4回もあるんですよ。見開き一つ、およそ2,000字の間に4回なので、500字に一回視線を大きく動かさなくちゃいけないとなると集中滅茶苦茶散漫になるんですよね。

 

本文用紙

B6なのでまあ……ざらざらで分厚くてもクラシック感出てそれはそれでアリかな……あと多少紙に張りがあってもフォーマル感出るか……ということで拘りが薄れました。とはいえ基本的にはつるつる紙が好きな知覚過敏傾向持ちなので、文庫で考えていた折に予定していた紙(淡クリームキンマリ62kg)からは変えず。またリュウミンとの相性の面でも、あの直線的なフォントにはつるつるの紙だろうと。オールド明朝にしてたら美禅紙に変えてたかもしれない。ニューバルギーはさすがにざらざらすぎるかなあ……

絶対に薄くてつるつるのやつがいい

読んでて手を滑らせた瞬間ばいんて紙が跳ね返ってくる本滅茶苦茶読みにくくないですか? 下手したら読んでたページどっか行っちゃう。キレそう

A5だと紙が大きいのでまだマシなんですが、文庫だと硬い紙ってマジで読みにくい。ページ数が100超えてきた日には手も疲れる。

なので絶対に柔らかい≒薄い紙がいい。

あとざらざらした紙は印字も滲むしめくりにくいし気も散るので嫌いです。肌触りが滑らかで、指に吸い付いてきて(≒指の水分を吸いにくく、また指との間で摩擦を生みやすい)、文字のくっきり出る紙がいい。

 

このような条件で調べていると、どうやら紙の厚さは60kg台前半が望ましいらしい(できれば50kg台がいい)。但し軽くとも「嵩高」タイプの用紙は空気を含ませたザラザラで分厚く張りのあるものなので除外(多分厚みの分裏抜けしにくい漫画向きの用紙)。

 

このレベルで薄い紙の取り扱いのある印刷所となるとそれなりに限られてくるらしく、簡単に調べた限りだとワンブックス、しまや、ブロス、栄光、くりえい社くらいであるようです。ちょ古っ都もかな?情報を頂けましたら嬉しいです。

特にワンブックスの小説用紙は白眉で、他社にはない50g台の用紙が複数揃っています。

 

印刷所選び

小口染をやってみたかったのですが、この加工を取り扱ってる印刷所が、ググった限りではスタブ、ブロス、栄光、緑陽社、プリントオンのみ。

このうちスタブと緑陽社、プリントオンは薄い本文用紙がないので除外。

栄光は小口染で選べる色のラインナップが少なく、濃い原色しかないので今回予定している装丁には合わない。

ブロスは淡クリームキンマリ62kgを取り扱っており、また天地小口染の色数も豊富……なのですが、天地小口染はオフセットでしか引き受けないとのこと。

 

袋小路に入り込んだかに思われましたが、ダメ元でブロスに問い合わせたところ、発色等に難があっても良いのならオンデマンドでも天地小口染してくれるとのこと。

というわけで、リスクはありますがブロスにしました。

 

表紙用紙

なんでもいい………………なんか………………ふつうのやつ…………………………

つって、小口染をする場合インクの付着を防ぐためPP加工が必要になるそうです(コート紙でもそうなのか?)。本文用紙拘っても表紙がこわかったら意味ないので、薄めの用紙かなあ。紙の種類多すぎて分からないですね。

迷いつつジェントルホワイトフェイスを選択