同人誌字組・装丁まとめ
小説同人誌を作った記録
ページ数:350p(表紙抜き)
印刷所:ブロス(オンデマンド)
本文用紙:淡クリームキンマリ62kg
表紙用紙:ジェントルホワイトフェイス175kg
遊び紙:色上質紙(空色)
特殊装丁:表紙マットPP加工、タイトル箔押し(銀色)、小口染(空色)
字組:B6・一段組・44字×18行
余白:天18mm,地25mm,小口13mm,ノド21mm
フォント:リュウミン8.5pt
作業ツール:Microsoft word(本文)とCubePDF(WordからのPDF出力)、MedibanPaint(表紙)、xodo(校正)
目標
紙面、物理の本としての存在感が限りなく薄い、読んでいる時の意識の妨げになる要素を極力廃した本にしたい。
本作は企画本(とでもいうんか?コンセプトの強い本)ではなく執筆活動の一旦の総括、愛蔵版的な意味合いのある再録本です。その為装飾性よりも読みやすさを重視し、シンプルかつオーソドックスな字組・装丁を目指しました。
用紙
正解だったのではないかと思います。
読んでいる時ピンと立ち上がって来るのに私は苛立つので、柔らかい(薄い)書籍用紙を使うことにこだわりました。その甲斐あってとても柔らかく読みやすい本になりました。また平滑性の高い(つるつるした)紙なので、ざらついた紙に神経のざわつく知覚過敏傾向の人(私だ)にも優しいです。紙自体の意識へのひっかかりをかなり抑えられました。
淡クリームキンマリ62kgは同人誌印刷所が備えている紙としてはかなり薄い部類です。A5〜B6版ならばこれで十分ではないかと思います。これより薄いものは私の調べた限りではコミックモールさんとワンブックスさんしか取り扱っていないのではないでしょうか(この二社は50kg代の紙の取扱がある)。
文庫版を作るとしたら、もちろん62kgでも十分に許容範囲ではあるのですが、できればこれらの印刷所で50kg代の紙を使いたい気がします。
サイズ
一般書籍における単行本の標準的なサイズは四六判です。これに近いB6サイズを採用しました。
文庫版の生活に寄り添う小回りやしなやかさは大変魅力的なのですが、前述の通り愛蔵版的位置付けの本であるため、単行本に近いサイズとしています。この点においては読書中のストレスよりもビジュアルを重視してしまいました。
字組
一段組にとても強いこだわりを持っています。二段組は一つの見開きの中で視点の移動が3回発生し、意識の引っかかりになってしまいます。ページを捲る時を除いて右から左へと視線誘導のスムーズな一段組を採用しました。
設定はこんな感じ
※断ち切り3mmが付け足されています
※行数は段落設定で操作しているためこの画面の数値は無意味です
フォント
直線的ですっきりとしたフォントを使いたいと思い、有料フォントであるリュウミンL-KLを買いました。なお本文はリュウミンですが、目次や扉ページの見出しははんなり明朝(フリーフォント)はじめ装飾性の高いフォントにしています。
リュウミンは正方形かつ大きめのフォントなのでB6サイズに敷き詰めると紙面の圧が出やすくなる(わちゃっとする)、換言すると視線誘導が妨げられるので、字間・行間の調整には気を遣いました。またフォントサイズも、一般に推奨されるサイズより小さな数値にしています。
出来上がったものを見るとオンデマンドながら家庭用プリンタとは一線も二線も画した、滲みの一切無い仕上がりで刷って頂けていました。すっきりと細身なリュウミンの良さが大いに活かされ、嬉しかったです。
また、表紙と扉には良い感じの英文フリーフォントを採用(表紙は箔押し部分が潰れると指摘されたため、手作業で太字化)。英語のライセンス規約を白目剥きながら読みました。商用利用OKでもポルノNGなことがあるから注意。
ちなみに、リュウミンは濁点仮名が出せないため、該当箇所だけは源暎こぶり明朝に切り替えています(3099F5して上寄せ&字間狭めに調整してもひらがなと濁点の間が不自然に空いてしまい、word上での解消法が分からない)(テキストボックスは嫌……)。フォント変わるのも違和感は違和感ですが……う〜ん
余白
天地が広いとかっこいいんですよね。350ページと厚めの本なのでノドは広めに21mm取りました。
柔らかい紙であることも手伝ってあと2-3mmくらい狭いのは許容されるかなという印象です。広すぎて気になるというほどではないと思います。
表紙
センスは脇に置くとして……表紙の色味と文字のアンチエイリアスが反省点です。
小口の色と表紙の色を揃えてティファニーの箱みたいにしたかったんですよね。その為に空色の小口染のできるブロスを選んでいます。でも大分かけ離れた色になってしまいました。まあディスプレイでは分からないし仕方ありませんね。(※小口染は印刷所に備え付けられた色ラインナップからしか選べないため、こちらから揃えに行くしかない。小口染の色のRGB数値、せめてCMYK数値かDCI番号……だっけ?を問い合わせるべきだった)
また文字のアンチエイリアスをオンにしたのですが、そのせいでのっぺりとぼやけてしまいました。
作業ツール
Word→みんなたちは嫌いって言うけど私は結構仲良くできてる自負はあるけどそれでも時々キレそうになったので一太郎かインデザが欲しい。あとフォントサイズは0.5pt刻みでしか調整できないです。
作業中は両サイドに柱のようにナビゲーションウインドウとスタイルウインドウ開いておくのがお勧め。
xodo→フリーのPDF閲覧&編集アプリなんですが校正・推敲作業用にめっちゃお勧めです。特に校正時は見開き表示が無いと無理です。ノド側寄せ、小口側寄せといった体裁のミスを見つけるには見開き表示が不可欠です。xodoはこのブックビューに加えコメントやマーカー、手書きの書き込み等様々なアノテーション挿入が可能なアプリなので、これとスマホやタブレットがあれば推敲・校正は行けます。
Cube PDF→Word標準のエクスポート機能だとフォントが事故るという話を目にしたのでフリーの変換ソフトDLしたよ。PDFのバージョンとかフォント埋め込みとかpostscriptオプションとかマジでよく分かんないけどなんとかなった。
メディバン→CMYKプロファイルとかマジでよく分かんないけどなんとかなったけどイラレが欲しい。特に位置揃えとか幾何学的な曲線とかできないからねペイントソフトは。
表紙用紙
小口染をする場合インクの付着を防ぐためPP加工が必要になります。
ジェントルホワイトフェイス175kg、ググるとややラフ紙とのことでしたが確かに印刷にムラがある。単色ベタの表紙なので、このムラのお陰で立体感が生まれているようにも思います。
風合いは出ますが、ムラを嫌うなら避けるのが良さそうです。
またマットPP加工した上でそれなりに薄く柔らかいので、単体で使うとなるとカバー付き文庫くらいにした方がよさそうです。
ややラフですがほんと〜にややなので、タント紙やマーメイドのようなざらりと紙の質感を感じられる、という程ではないです。
今回は柔らかい本という目標があったので、それに合致して概ね満足です。さらりと主張のない表紙になったかな、手も疲れないし。
あとマットPPマジで反る
今回諦めたことといつかやりたいこと
納期の関係で諦めたのですが、ほんとはしおり(スピン)つけたかった!あと表2,3の白いのが嫌なので遊び紙を前後各2枚にした上でフランス製本に、あるいはせめて見返しに紙貼るやつやりたかった!!!!!!
また今回コンセプトとかと照らしてやめたのですが、ざらざら目の紙に筑紫Aオールド明朝Lでクラシックな字組やりたいなあと思っています。読みやすさは削がれるから企画本がいいね。
装丁についてはヴィンテージゴールドのクラフト面に金インクでタイトル印刷(=見返しの表2,3が金ピカ)&別発注のラベルを小口に貼ってまるで風をされたパッケージみたいになった薄い本を作りたい。それをヒートシーリングのビニール袋に入れてお届けしたい。